産休中に有給休暇を取得することができるのか?産前に出産手当をもらうよりも有給休暇を消化した方がお得だけど法律的に大丈夫かな。この記事は産休中に有給休暇を取得することができるのか?また、退職後にそのまま出産手当がもらえるための方法について説明しています。
【この記事でわかること】
・産休中の有給休暇は産前と産後で取り扱いが違う
・産前は条件付きで有給休暇を取得することができる。取得する順番が重要
・産後は有給休暇の取得はできない
出産に向けて会社を働き続けるべきか、一旦出産前に退職をするか、もしくは産休取得後育休取得前に退職などいろいろ考えてしまうことと思います。この記事では有給残がある場合に産休中に有給休暇を使うことができるのかについて説明します。
出産日は産前産後どっち?出産日は産前
産前42日を計算するときにそもそも出産日は産前なのか産後なのかわかりにくですよね。出産日については労働基準法で産前と定められています。従いまして、出産手当金が支給される産前42日の産前開始日を数える場合には、出産日も1日分カウントにいれて42日を数えます。
2月11日が出産日の産前開始日はいつ?
出産(予定)日の2月11日を含めた42日、つまり6週間を数えてみると丁度1月1日が産前42日で出産育児金が支給される産前開始日です。
カレンダーで出産日2月11日以前の6週(42日)目を数えると産前開始日1月1日がわかるのですが、以下の協会けんぽの産前産後一覧表や厚生労働省の産休・育休開始日早見表で産前開始日、産後終了日および育児休業開始日がパッと見で簡単にわかるので便利です。産前産後休業や育児休業手続きの実務担当者は、産前産後休業や育児休業の自動計算サイトは参考程度で必ず早見表で確認をしています。
理由は自動計算のプログラムはとても便利なのですがプログラムである以上必ずしも正しいとは言い切れないことから本当に出力された産前開始日が正しいかについて目で確認することが必要となるからです。協会けんぽや厚生労働省が公開している早見表であれば安心ですよね。
産前産後・育休早見表のまとめ
【産前産後・育休早見表】
こちら協会けんぽのHPで「産前産後一覧表」という早見表があります。産前産後一覧表で出産日に応じた産前開始日と産後終了日がとても分かりやすく表にまとめてあります。
▷産前産後一覧表
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/migration/g3/cat315/20130201-170528.pdf
(引用:協会けんぽHP)
育休開始日も確認したい場合には、厚生労働省のHPに「産休・育休開始日早見表」が載っていますのでご確認ください。
▷産休・育休開始日早見表
https://jsite.mhlw.go.jp/shiga-roudoukyoku/var/rev0/0126/7808/201482911216.pdf
(引用:厚生労働省HP)
育休開始っていつからになるのですか?
育休開始日は産休終了日の翌日なの。だから産後56日目の翌日の産後57日が育休開始日になります
育休終了日は赤ちゃんが1歳まででしたよね
詳しくは子供が1歳に達する日の前日。1歳に達する日が誕生日の前日なので実際には誕生日の前々日までです
法律上の定義は難しいのですね、、なので下に産育休の開始日と終了日をまとめました
産育休の開始日および終了日のポイント
・産休開始日
L出産(予定)日を含む42日以前から
・育児休業開始日
L産後57日以降
・育休終了日
L子供の誕生日の前々日まで
なお、育児休業の詳細については下記の【社労士監修】産休と育児休業はいつから取得できる?をご覧ください。
産前に既に会社に産休の申し出をした場合には有休は取得できない
事前に会社に産休の申し出をしている場合は、その後に出産までの期間を有給休暇に変更することはできません。その理由は、従業員は会社と締結している雇用契約に基づいて働く義務があるのですが、有給休暇とは法律上その働く義務を免除するという位置づけとなります。
つまり、既に産休の申請の申し出をしている場合には労働基準法で定められたお休みがもらえるので、働く義務自体がない状態なのでそもそも有給休暇を取ることができません。一方、産休の申し出前に有給休暇の取得することは問題ありません。従って、産前休業中は条件付きで有給休暇を取得することができるというのが結論となります。ポイントは有給休暇の取得申請をする順番がとても重要となります。
産前の産休と有給休暇は取得の順序が重要
・産前の産休を先に取得した場合には働く義務がなくなるので労働の免除にあたる有給休暇は取得できない
・産前に有給休暇を取得する場合は、会社へ産休の申し出をする前に有給休暇の取得申請をする必要がありますのでご注意ください
出産前に退職し、退職後も引き続き出産手当をもらうことも可能です。詳しくは【社労士監修】退職後に出産手当金をもらうことができる?退職後の継続給付徹底理解!をご覧ください。
産後休暇は有給休暇の取得ができない
労働基準法上で産後8週間を経過しない女性の就業は禁止としています。それは母体保護の観点からのもので出産は非常に体力を奪うもので産後の女性は著しく体力が低下してしまいます。つまり、就業禁止の期間になるのでそもそも働く義務の免除である有給休暇自体が使用できない期間となります。
ただし、産後6週間を経た女性が請求した場合には、医師が支障がないと認めた業務に就業させることは差し支えありません。
産休中の就業禁止のまとめ
産前6週間から出産予定日まで | 産前+本人の請求⇒就業禁止 |
出産日の翌日から6週間 | 産後(6週目まで)|⇒強制的に就業禁止 |
産後6週間超え8週間まで | 産後(6週超から8週目)|本人の希望+医師の許可⇒就業可 |
産休中に給与をもらうと出産手当金は減額される
出産手当金は産休中(産前42日、産後56日の期間)に給与をもらわない被保険者が対象となります。もし、この産休中に給与をもらう場合には、出産手当金の1日分の支給額より下回る金額であれば、出産手当金と一日分の給与額との差額が受給ができます。ただし、1日の給与が出産手当金の1日分額以上の金額の場合には出産手当金は支給されません。その理由は、出産手当金は産休中の女性の出産や生活を支えることを目的とした給付金であるため、出産手当金以上の給与をもらっている人は出産手当金の必要がないとみなされるからです。
最大限取りこぼしがない産休の取り方は「有給消化後+産前開始」
産休および育児休業の取り方についてはご本人およびご家庭それぞれの考え方がありますので、どれが正しいということはなくそれぞれ自由に選択していただければという大前提があります。そのなかで制度としてもらえる給付日数を最大限に取りこぼさずもらいたいと考える場合には、有給休暇を全て消化後+産前開始が最有力候補となるでしょう。
ただ、デメリットもあって、当然のことながら有給休暇を取りたい時期が会社の繁忙期の場合などは会社側にも有給休暇を取得する時期をせめて変えてほしいという時季変更権があるので時季の変更を求められてしまう可能性があります。なお、有給の大量消化については退職の意思も含め事前に会社と取得時期について余裕をもって話し合うことがスムースに進められると考えます。
次に出産が予定より早くなり出産手当金の期間が減ってしまい出産手当金が目減りしてしまうというケースがよくあります。有休消化については余裕をもって会社に伝えることである程度コントロールできますが、出産についてはコントロールができないものなのでタイミングがよく予定通りにすすめばこのような産休の取り方もあるという認識でいるのが宜しいのかなと思います。
まとめ
産休中の有給休暇の取り扱いについて徹底解説をしました。産前開始したあとに有給休暇と比べて後付けで変更してもよいという誤解も多く見受けられます。また、総務の担当者がなるべくよい条件で産休を取ってもらえるように良かれと思ってアドバイスしたことが法律的根拠がなく実は間違っていたということも少なくありません。
従いまして、産休における法律上の根拠は上記で説明し、そのうえでご自身がどのように産休を過ごしたいか、また復職を踏まえどのように会社と関わっていくのかなどをイメージして頂ければよいのかなと思っています。出産手当金をもらわずに有休消化で出産前に退職する方、めいいっぱい有休消化+産休+育休の制度活用をさせる方、とにかく早く復職したい方などご本人およびご家族が出産に向けての考え方が様々ですので周辺知識を理解したうえで上手に産休制度をご活用いただければと思います。
なお、法改正の出産後8週間に男性が4週間育児休業を取得することができる出生時育児休業給付金と産後パパ育休については【社労士監修】出生児育児休業給付金の徹底理解!産後パパ育休についてをご覧ください。
【番外編】以前、産休時の手続き必要書類や期限がやることリストの(社内編)を作成したのですが、妊娠中に生活面でやっておけばよかったものについてDMの相談が度々連絡を戴くのでまとめてみました。こちら【FP1級監修】妊娠中にやっておくと生活が楽になるリスト(生活編)の記事をご覧ください。
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