産休育休

【社労士監修】退職後に出産手当金をもらうことができる?退職後の継続給付徹底理解!

2023年2月19日

出産手当金は原則会社に在籍していて産前産後休暇を取得していることですが、もし会社を退職したらそれまでうけていた出産手当金は支給されなくなってしまうのでしょうか?また例外規定などあるのでしょうか?退職後に受給できる健康保険の継続給付について徹底理解をしたいとおもいます。

【この記事でわかること】
・退職後の継続給付金の種類
・退職後も出産手当金を受給するためのポイント
・退職日に有休取得をしても退職後の継続給付が受けられること
・退職後に出産手当金をもらっている間は扶養にはいれないこと

退職後にも継続して受給できる給付金は4つ

原則、退職後は健康保険の保険給付を受けることができません。ただし、一定の要件を満たすことで退職後にも以下の4つの給付(出産手当金、出産育児一時金、傷病手当金および埋葬料)については引き続き保険給付(資格喪失後の継続給付)を受けることができます。4つの給付のがいようについては以下にまとめました。

退職後に受けることができる4つの給付

(※ただし、一定要件を満たすことが必要)

・出産手当金       産前42日以前および産後56日の合計98日、出産のために会社を休み給与をもらわなかった場合に給与の2/3支給        
・出産育児一時金        1児につき42万円(R5年4月から50万円に改定予定)
・傷病手当金          病気やケガで仕事を休みその間の給与を受けられない場合に給与の2/3支給  
・埋葬料(費)        亡くなった被保険者により生計を維持されて、埋葬を行う方に「埋葬料」として5万円が支給

今回は退職後の継続給付のなかの出産手当金について深堀をしていきたいと思います。

育児休業給付や2022年10月の法改正の産後パパ育休の詳細についても知りたい方は【社労士監修】出生児育児休業給付金の徹底理解!産後パパ育休についてを合わせてご確認ください。

出産前に退職、退職後にも出産手当をもらうための3要件(資格喪失後の継続給付)

出産手当金は産前42日および産後56日の合計98日の期間で以下の要件を満たせば退職後にも引き続き保険給付を受けることができます。その要件は以下になります。

退職後に出産手当金を受けるための3つの要件

  1. 会社を退職する日までに継続して1年以上の健康保険に加入していること(健康保険任意継続加入期間を除く)
  2. 資格喪失時に出産手当金を受けているか、または受ける条件を満たしていること
  3. 退職日に出勤しないこと。出勤した場合は継続給付を受ける条件を満たさないため退職日の翌日以降の出産手当金は不可


ここで重要なのは3番目の退職日に働いていないことになります。例えば、引継ぎなどで少し出社してもいいですかなどの質問があります。もし、退職日に少しでも働いてしまった場合には退職日以降の出産手当金を受けることができなくなってしまいますのでご注意ください。

なお、3の退職日に出勤した場合には退職後の出産手当金が不支給になる根拠については下記の協会けんぽのHPのQ7から確認できます。


<協会けんぽのHPのQ7>
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g6/cat620/r311/#q7

退職日に有給休暇を使用しても退職後の出産手当金はもらえるの?

結論退職日に有給休暇を使用していても退職後の保険の継続給付の要件を満たします。

(参考:東京都情報サービス産業健康保険組合HP/ https://www.tjk.gr.jp/insurance/birth/kenpo-04_03)

有給休暇はそもそも労働の免除の意味合いがあるので出勤していることになるのでは?と考えてしまう方もいるのではないでしょうか。こちらにはあくまで退職後の継続給付の要件として退職日(資格喪失の前日)に就労していないということとなっているため有給休暇を取得しても要件を満たすとされています。



ただし、それまで産前の出産手当金をもらっていて退職日だけ有給休暇にするというのは産前に有給休暇を取得するポイントの順序が真逆になっているため制度上できません。産前に有給休暇を取得するポイントの詳細については【社労士監修】 産休中に有給消化できる?出産手当金徹底理解!でご確認ください。

ここでは実際に出産前に退職した場合に退職日に有給休暇を使うケースとはどういったものか考えてみたいと思います。

新米ぴよ美

産前の最終日が有給休暇をつかうケースはどういうのがありますか?

産前を出産手当金を受けず全て有給消化して退職するケースや業務多忙で出産手当金を受けず引継ぎを終えてから退職日まで有給消化をするケースがあります

とり子先輩
新米ぴよ美

人によって産休の取り方も様々なのですね

ただし、最終日は出社しないということが退職後の継続給付を受けるポイントです

とり子先輩

退職後に加入できる医療保険制度は4つ

退職後に加入できる医療保険制度は4つあります。退職後に次の会社に転職する場合には転職先の健康保険に加入します。次に退職後に転職しない場合には2つパターンがあり、結婚している場合は配偶者の健康保険の扶養として加入することです。一方、独身の場合などは国民健康保険に加入します。最後に退職前に加入していた健康保険の任意継続被保険者として退職後、最大2年間まで加入することができます。

以下、まとめました。

別の会社に転職新しい会社で健康保険に加入
転職しない(配偶者あり)配偶者の健康保険の被保険者として加入
転職しない(配偶者なし)国民健康保険に加入
転職しない(扶養or収入が多い)従前の会社の健康保険の任意継続被保険者として加入(最大2年間)
任意継続は会社負担分の保険料も併せて支払う必要があります。

退職後に出産手当金受給者は配偶者の扶養に入れない?

なお、退職後に出産手当金をもらっている場合にはほとんどの方が日額3612円を上回ってしまうため、配偶者の扶養に入ることができませんので個別に国民健康保険に加入する必要があります。

<計算根拠>
健康保険でいる被扶養者の範囲年間130万円なのでこれを1日あたりに換算すると

130万÷12ヶ月÷30日=3,611.111...≒3,612円となります。

従いまして、日額3,612円(月額108,360円)以上の出産手当金を受給している間は扶養に入ることができません。
つまり、出産手当金を受けている方のほとんどの方が支給を受けている間は、配偶者の扶養にはいることができないということになります。

▷出産手当金を受給し終えたら扶養に加入できます。

退職後の出産育児一時金

退職日まで被保険者期間が継続して1年以上ある方が退職日の翌日から6ヵ月以内に出産したときは出産育児一時金が支給されます。退職後に被扶養者となった場合は、退職後の出産育児一時金または家族出産育児一時金のどちらかを選択となり、二重に受けることはできません。

なお、被保険者の資格喪失後にその被扶養者だった家族が出産しても家族出産育児一時金は支給されません。

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