産休育休

【社労士監修】出生児育児休業給付金の徹底理解!産後パパ育休について

2023年1月17日

2022年10月の法改正により育児休業の分割取得や、男性版産休である産後パパ育休の取得が可能となりました。従来の育児休業制度と何が違うのか混同しがちなのでこの記事では、従来の育児休業給付制度の確認をしたうえで今回新設された出生時育児休業給付金の概要や支給要件について解説します。

【この記事でわかること】
・これまでの育児休業給付金と法改正の出生時育児休業給付金の比較
・3つの月給別の育児休業給付金の支給額シミュレーション
・産後パパ育休の概要

育児休業給付制度とは?

育児休業給付制度とは、雇用保険に加入している労働者が産後57日から満1歳までの育児休業中に給与が一定以上支払われなくなった場合に給付を受けることができる制度です。制度の建付けとしては、産前42日(6週間)以前、産後56日(8週間)の産休は健康保険から、産後57日から子が1歳になるまでの育児休業期間については雇用保険からの給付となります。

育児休業給付金の額は?

育児休業給付金は育児休業開始から180日を分岐として以下の様に支給率が変わります。

・育児休業開始から180日:休業開始時賃金日額×67%

・育児休業開始から181日目以降:休業開始時賃金日額×50%

上記のとおり育児休業給付制度は雇用保険から育児中で働くことができない被保険者に対し、育児休業開始から半年間は賃金の7割弱が支給されます。半年以降から子が1歳になるまでの約4か月間は賃金の約5割が支給されます。

新米ぴよ美

育児休業給付は1ヶ月でどの程度もらえるのか金額を教えてください

下に月額給与が15万円、20万円、30万円の3つパターンで試算してみました

とり子先輩
新米ぴよ美

育児休業給付金は6か月以降からは67%から50%に減ってしまうのですね

<育児休業給付金支給額シミュレーション>
育児休業給付の1支給単位期間ごとの給付額は、「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」により算出します。
(ただし、育児休業の開始から181日目以降は50%です)

正確な金額はハローワークに提出する雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書により休業開始時賃金日額が算出されますが、育児休業給付金における1支給単位期間において育児休業期間を対象とした賃金の支払いがない場合の支給額は、育児休業開始前6か月間の総支給額により概ね以下のとおりになります。

【平均して月額15万円程度の場合】
 育児休業開始から180日目までの支給額は月額10万円程度、
 181日目以降の支給額は月額7.5万円程度

【平均して月額20万円程度の場合】
 育児休業開始から180日目までの支給額は月額13.4万円程度、
 181日目以降の支給額は月額10万円程度

【平均して月額30万円程度の場合】
 育児休業開始から180日目までの支給額は月額20.1万円程度、
 181日目以降の支給額は月額15万円程度

※給付額には上限があります。また育児休業期間中に賃金が支払われていると減額される場合があります
※休業開始時賃金日額は、原則として育児休業開始前6か月間の総支給額を180で除した額です
※ 出生時育児休業給付金については休業期間の日数(28日が上限)、育児休業給付金における1支給単位期間の支給日数は、原則として30日となります

引用:厚労省 育児休業Q&A Q23)

育児休業給付制度の支給要件

以下が育児休業給付の原則的な支給要件になります

・1歳未満の子を養育するために育児休業を取得した雇用保険被保険者であること

・育児休業を開始した日前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上あること

(ない場合は就業した時間数が80時間以上の月が12か月以上あること)

・1支給単位期間中の就業日数が10日以下または就業した時間数が80時間以下であること

なお、育児休業を開始した日前2年間に被保険者期間が12ヶ月に満たない場合であっても、当該期間中に第1子の育児休業や本人の疾病などがある場合は、受給要件が緩和される場合があります。

新米ぴよ美

わかりやすく言うとどういうことですか?

社員さんなら過去2年間のうち1年以上雇用保険にはいっていれば大丈夫ということ

とり子先輩

育児休業給付制度の対象外となるケース

以下が育児休業給付の支給対象外となります。

・育休中に会社から給与が8割以上でている

・育児休業が始まる時点で育児休業終了後に退職予定がある

・育児休業を取らずに職場復帰をした

新米ぴよ美

育児休業を取る前に会社を辞める事を会社に伝えてる場合には育児休業給付金がもらえないのですね

そうなの、育児休業給付金は職場に復帰することが前提の給付金でもあるの

とり子先輩

育児休業給付制度の改正の趣旨

政府は、近年の急激な少子化の現状を受け、令和2年5月29日に「少子化社会対策大綱」を閣議決定しました。そのなかで「男性の家事・育児参画の促進」が近年の急激な少子化の最重要課題の1つとして5年後の2025年までに男性配偶者の出産直後の育児休業休業取得率を80%とすることを目標(さんきゅうパパプロジェクト)として掲げています。この目標を達成するという背景から今回育児・介護休業法が改正されることとなり、出産後8週間に男性配偶者が育児休業を取得することを想定とした男性版産休である「出生時育児休業制度(産後パパ育休)」が創設されました。

(参考)
さんきゅうパパプロジェクト

【新設】育児休業の分割取得とは?

従前の育児休業制度では子が1歳になるまでの育児休業は原則1回のみの取得となっていました。しかし、今回の2022年10月の法改正からは1歳未満の子を養育する場合に、2回の分割した育児休業が可能となり、夫婦でそれぞれ分割取得をした場合には合計4回の育児休業を取得することができ、それぞれ給付金を受けられるようになりました。なお、3回目以降の育児休業については育児休業給付金を受けることができませんので注意が必要です。

1歳以上の育児休業延長分割の実務>
1歳以上の育児休業の延長において夫婦間で育児休業を交互に分割取得(延長分割)することができるようになりました。延長分割をする場合には、交代の際に1日でも期間が空いてしまうと延長分割の要件から外れてしまうため、期間を空けてしまった以降の育児休業給付金の申請が不受理となってしまいますので注意が必要です。


一方、夫婦間で1歳以降延長したそれぞれの育児休業の期間が重複する分には全く問題はありません。従いまして、夫婦が1歳以降の育児休業を延長分割する場合には、夫婦間で交代する際に育児休業期間を重複する期間を設定するなど余裕を持った育児休業スケジュールを計画することをお勧めします。実際には奥さんがこれまでやっていった1日の育児のルーティンを育児休業を交代する旦那さんに申し送りをする期間があると良いかと思います。

【新設】産後パパ育休と出生時育児休業給付金とは?

男性の育児休業の取得率の低さを改善するための施策として育児休業とは別に産後パパ育休が新設されました。産後パパ育休は子の出生後8間以内に4週間まで取得できる制度です。産後パパ育休を取得した場合には雇用保険から出生時育児休業給付金を受けることができます。取得回数は最大2回に分割しての取得が可能です。以下支給要件をリストアップしました。

1.子の出生日から8週間を経過する日の翌日までの期間内に4週間以内の期間を定めて、当該子を養育するための産後パパ育休(出生時育児休業)を取得した被保険者であること(2回まで分割取得ができます)。
2.育児休業を開始した日前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12か月以上ある、もしくは就業した時間数が80時間以上の月があること
3.休業開始中の就業日数が、最大10日(10日を超える場合は就業した時間数が80時間)以下であること

こちらも育児休業給付金同様に休業開始時賃金日額×67%になります。

新米ぴよ美

ちょっとむずかしくなってきました、、

普通の育児休業給付金と要件はおなじだから安心してね

とり子先輩
新米ぴよ美

もらえる金額も同じなんですか?

支給率は普通の育児休業給付金と同じ、休業開始時賃金日額の67%(最大28日まで)です

とり子先輩

なお、育児休業給付金と出生時育児休業給付金は全く別物の給付になりますが、育児休業給付金の支給率を算出する際の180日の起算については産後パパ育休の期間(最大28日)を通算した期間になります。

なお、産後パパ育休の詳細については【社労士監修】産後パパ育休とは? 給付金・社会保険料免除の要件、パパ休暇との違いを解説!にまとめていますのでご確認ください。

まとめ

今回の改正で出産して間もない期間の男性の育児参加を促す目的で産後パパ育休が新設され、産後パパ育休とセットで出生時育児休業給付金が雇用保険から支給されることとなりました。新設の背景としては男女の区別なく育児に参画ということがありますが、母性健康管理の観点から出産後に母親のワンオペ育児が原因で産後鬱になってしまうケースが少なくありません

産婦人科の医師や保健師の方曰く、この産後鬱がはなかなか手強いのは出産後に母親が医療機関にかかる機会が少ないことも相まって、産後鬱の病状がなかなか表に現れにくく前兆などがあっても誰もわからないままという潜在的な問題があります。その観点からも男性配偶者に出産後8週間以内に育児休業を取得し、育児のフォローアップをすることで産後鬱の予防につながることも期待されています。

一方、法改正後産後パパ育休を使い始めている方も増えており、労務管理担当者の視点と致しましては出産まもない母をサポートする制度として非常によい制度だと感じています。ただ、実際の産後パパ育休の分割の運用については会社の業務によっては導入に課題があるケースも少なくありません。自社の制度にどうしたらうまく活用できるか?8週間の間に分割して育児休業を取得する従業員の申し送りなどの引継ぎをどのようにするか?など実務レベルで運用の課題をどうしていくかがポイントになっていくかと考えます。

従いまして、その都度いかに従業員が取得しやすくできるかについて社内で検討していき、従業員のみなさんにとってより使い勝手のよい制度になるように改善していくことで更に従業員満足度は高まるものと考えます。

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