ここ数年は男性の育児休業取得の認知も高くなり、特に若い世代の男性は育児休業を取ることが増加してきています。そこで一番気になるところは実際に女性が出産をし休業をしているときに男性が育児休業をとったら果たして生活していくことができるのか?という点だと思います。本当に男性が育児休業をとるといくら育児休業給付金がもらえるのか正しく知ったうえで育児休業を取るべきなのかの判断のきっかけにしてもらえたらと思います。
【この記事でわかること】
・育休期間中に申請することで雇用保険から育児休業給付金がから支給される
・育児休業給付金は育休開始から半年は給与の67%、半年から1年までは50%支給
・育児休業中でも住民税の納税は毎月発生
・育休期間中は健康保険および厚生年金等のの社会保険料が免除
・給付金と免除を含め収入が休業前の月収の約8割になるのは半年間だけ
そもそも育休とはどのような制度なのか、実際にどのくらいの男性が育休を取っているのかについては下記の記事で解説していきます。
育休期間中に申請することで雇用保険から育児休業給付金が支給される
男性の場合、配偶者の出産予定日から子どもが1歳になる誕生日の前日まで取得できる育休(育児休業)ですが、多くの企業では育児休業期間中は就業規則で無給と規定しています。なお、雇用保険に加入している方で要件を満たしていれば育児休業給付金を受給することができます。
フリーランスや八百屋さんなどの自営業者はオーナーであるため雇用される従業員のための雇用保険に加入自体ができません。従いまして、雇用保険から支給される育児休業給付金をもらることができません。
以下では、育児休業給付金について紹介をします。
育児休業給付金の受給条件
受給する条件は以下になります。
・雇用保険に加入し、保険料を支払っている
・育休前の2年間で11日以上働いた月が12カ月以上ある
・育休中の就業日数が各1ヵ月に10日以下
・育児休業後、退職予定がない
・育休中に休業開始前の1ヵ月の賃金の80%以上が支払われていない
育児休業給付金の詳細については【社労士監修】産休と育児休業はいつから取得できる?をご参照ください。
育児休業給付金の受給対象期間
受給できる対象の期間は男性の場合は配偶者の出産予定日から子の1歳の誕生日の前日までの間です。一方、女性の場合は産後8週間(56日)は産休中となり健康保険から出産手当金が支給されます。したがいましてて休業育児休業給付金が受給できるのは、産後8週間(56日)の翌日(57日)から育児休業となりますので、女性の育児休業については57日から子の1歳の誕生日の前日までが育児休業の期間となります。
また、育休を夫婦で交代して取得するパパ・ママ育休プラスを活用し1歳2カ月まで育休を延長する他、保育園に入所できなかったときに申請をすることで1歳半もしくは2歳まで育休期間を延長することが可能で、最大2歳まで育児休業給付金を受給することができます。
また、2022年10月から男性の育休期間について産後8週間以内に4週間の育児休業が取れる産後パパ育休が新設されました。産後パパ育休とその時にもらえる出生時育児休業給付金の詳細については【社労士監修】出生児育児休業給付金と産後パパ育休について徹底理解!をご覧ください。
育児休業給付金の計算方法
育児休業給付金の計算方法は以下のとおりです。
<育児休業給付金の支給率>
期間 | 計算方法 | 上限額 |
---|---|---|
育休開始から180日まで | 取得者の育休開始時賃金日額×支給日数(通常30日)の67% | 30万5,319円 |
育休開始から180日目以降 | 取得者の育休開始時賃金日額×支給日数(通常30日)の50% | 22万7,850円 |
育休開始から6カ月は休業前給与の67%、それ以降は50%が支給されますがそれぞれ上限額が決まっています。上限額は6カ月までは30万5,319円、それ以降は22万7,850円となります。一方、下限額は7万9,710円となります。(上限・下限金額は毎年8月1日に改定されます。)
<育児休業給付金がいくらもらえるか?>
休業前の給与(残業なし) | 育休開始から180日までは67% | 育休開始から180日目以降は50% |
---|---|---|
20万円 | 13万4,000円 | 10万円 |
25万円 | 16万7,500円 | 12万5,000円 |
30万円 | 20万1,000円 | 15万円 |
35万円 | 23万4,500円 | 17万5,000円 |
40万円 | 26万8,000円 | 20万円 |
45万円 | 30万1,500円 | 22万5,000円 |
50万円 | 30万5,319円(上限) | 22万7,850円(上限) |
(参考資料)
厚生労働省「令和4年8月1日から支給限度額等が変更になります」
育児休業中でも住民税は納税が必要
育児休業中に支給される育児休業給付金は非課税で所得税も住民税もかかりません。ただ、住民税について前年度の所得から算出されますので、前年に所得がある場合には給与収入が0円で育児休業給付金のみ所得がない場合であっても前年度の所得に基づいて住民税の納税が必要となります。
納税額は前年度の収入で決定する所得割と定額の均等割の金額を足した金額となります。なお、住民税額については前月の明細から控除されている金額をご参照ください。
給与から天引きできない場合は納付書で支払います
一般的に会社勤務の場合は毎月の給与から住民税が天引きされます。これを特別徴収といいます。しかし、ほとんどの会社では育休中は会社からの給与が支払われないため天引きができません。こちらは会社の給与規程で支給の有無についてご確認ください。従って、育休中は普通徴収に切り替えとなります。
ちなみに普通徴収とは自分が住んでいる市区町村の役所に直接住民税を収めるという方法です。納付方法は役所から送付される納付書を使い金融機関等で納税します。コンビニやwebバンキングでも納付ができます。給与天引きから普通徴収への切り替えは、会社が行うものとなるので従業員ご本人が手続きをすることはありません。
【実務担当者のポイント】
住民税の納税について前年度の所得に対する金額を6月~翌年5月に支払います。1月~5月に育休に入る場合、最後の給料日に5月までの住民税を一括徴収という形で5月分までの納税をします。こちらは退職時の住民税の徴収実務と同様になります。
育児休業給付金の申請方法
育児休業給付金の申請は会社が所轄のハローワークで手続きを行います。育児休業取得を希望する人は、育休開始予定日の1カ月前までに勤務先に申し出る必要があります。
実務担当者のポイントとしては、2022年10月に新設された産後パパ育休を取得する従業員がいる場合には産後パパ育休とセットの給付金である出生時育児休業給付金の手続きを忘れずにしましょう。出生時育児休業給付金については給与支払いが確定して初めて申請できる給付金となります。
実務の細かい部分になりますが、申請が可能になるのは出産予定日もしくは出産日のどちらか遅い日から8週間経過後と給与支払い日の翌日と比較して遅い日から申請が可能となります。
ただし、ハローワークの担当者曰く、新設されたばかりの給付金で流動的なため、電子申請で誤ってどちらか比較して早い日に申請しても返礼はされず受理をされたというケースも稀にありますので申請日可能日については所轄のハローワークの継続給付課にご確認いただくと間違いがないと思います。
育休期間中の社会保険料免除のシミュレーション
産前産後休業期間中の健康保険・厚生年金保険の保険料は、被保険者・事業主両方の負担が免除されます。社会保険料の内訳は2022年3月時点では健康保険料が協会けんぽ(東京)で40歳未満の場合は介護保険料8.2/1000の支払いがないので49.05/1000、厚生年金保険料が91.5/1000となりますので(49.05+91.5)/1000=140.55/1000となり、月収の約14%が社会保険料となります。
EX)40歳未満で月収30万円(標準報酬月額300千円)の場合、
・健康保険料 14,715円
・厚生年金保険料 27,450円
合計42,165円
となり、社会保険料免除により毎月支払っている42,165円の負担がなくなるということになります。
<給与別の育児休業給付金支給額>
休業前の給与(残業なし) | 育休開始から180日までは67% | 育休開始から180日目以降は50% |
---|---|---|
20万円 | 13万4,000円 | 10万円 |
25万円 | 16万7,500円 | 12万5,000円 |
30万円 | 20万1,000円 | 15万円 |
35万円 | 23万4,500円 | 17万5,000円 |
40万円 | 26万8,000円 | 20万円 |
45万円 | 30万1,500円 | 22万5,000円 |
50万円 | 30万5,319円(上限) | 22万7,850円(上限) |
上の表をみると月収が30万円の人の場合だと育児休業給付金は半年間20万1,000円がもらえるのですね
そう、ただ半年以降からは半額の15万円になってしまうの
女性が月収24万円だとすると出産手当は月収の約2/3なので16万円。産休前の世帯月収が54万円なので産休中に男性が育児休業給付金をもらう場合は世帯月収は36万1,000円、半年以降で31万円ですね
そこから毎月夫婦2人分の住民税の納付、産前の妊婦検診が1~2週間ごとに1,000~3,000円/回、産後にミルク代が月1万円前後、おむつ代が約4,500円/月くらいかかるイメージが良いでしょう。
ぴ~、、毎月の出費が結構かかるものなのですね(大汗
家賃や住宅ローンの固定費が高い世帯はパパさんが育児休業を取るタイミングはご夫婦でよく相談されるのがいいと思います。出産に関する費用については以下の【社労士監修】妊娠・出産でかかる費用はいくら?知っておきたい給付金制度の記事にまとめているので参考にしてみてくださいね
シミュレーション結果のまとめ
育児休業開始から半年間は67%の支給率なので設問の月収30万円の場合には半年間は20万1,000円が支給され、半年以降は50%に減額となるので育児休業給付金は15万円となります。育児休業給付金は非課税のため所得税は0円で社会保険料は免除申請で0円のため、この支給額からご自身で住民税を支払っていくイメージとなります。
国は休業前の80%の賃金を保証する想定で男性の育児休業給付金制度を策定しており、実際に育児休業開始から半年までであれば67%+社会保険料の免除および所得税非課税となりますのでよいのですが、育児休業開始から半年以降となると育児休業給付金の支給率は50%となってしまうので住宅ローンや家賃の支払いが高額である場合には男性の半年以上の育児休業取得はご家庭でよく検討されるのがよいかと思います。
なお、男性の育児休業における社会保険料の免除については20022年9月末日までは育休期間に月末を含んでいれば、その月の社会保険料が免除になっていました。つまり極端な話をするとこれまでは社会保険料がかかる基準が月末に働いていることであったため、男性が月末に1日だけ育児休業を取得するとその月の社会保険料が免除されてしまい、男性の育児休業による社会保険料逃れが問題になりましたが2022年10月の法改正により社会保険料逃れの抜け穴の見直しが行われました。
2022年10月以降は月末を含まなくても同月に14日以上の育児休業を取得した場合にはその月の社会保険料が免除されることとなりました。また、賞与の社会保険料については1か月をこえる育児休業を取得しないと免除になりません。
まとめ
2022年10月の法改正で男性が産後8週間以内の育児休業(産後パパ育休)を取りやすくなりました。その期間に産休中の奥様を育児休業を取得してサポートすることはママさんにとっても心強い支えになると思います。
夫婦2人で育休を取得する場合は収入面では育休開始から半年以降は育児休業給付金が50%になってしまうことから現在夫婦で育休を取得してるご家庭は電気代や物価の値上げで休業前と支出のイメージが異なってしまっているため固定費などの支出の見直しをせまられています。また、パパさんの育児休業給付金が50%に目減りするタイミングで職場復帰を検討されているご家庭では復職後にどうやってパパさんが仕事をしながら育児を継続することができるかが家庭内での喫緊の課題となっています。
今回は収入面でまとめてみましたが給付金が支給されるとはいえ育児休業開始から半年以降は育児休業給付金の支給率が50%に目減りしてしまうため、いつまで育休を取得するかやその時期にいくらもらえるかについて当該ブログを元にご家庭でご相談のお役立ちになれば大変うれしいです。
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